コラム

「人事考課の有効活用」

2019年8月26日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

 

人事考課の目的と管理職の役割

 8月後半から9月は多くの企業と自治体は人事考課を行います。人事考課は管理職が考課項目別に考課対象者(以下対象者と略記)を評価することから始まります。 そして多くの組織で管理職には評価結果に基づいてフィードバック面談を行うことが期待されています。人事考課の目的は3つです。1つ目は公正な処遇、2つ目は人材育成、3つ目は適材適所です。管理職による評価が的確であれば、その結果を使って昇格、昇給、賞与支給額を決定することによって、1つ目の目的である公正な処遇を実現できます。そして対象者を的確に評価できれば人材育成と適材適所にも活用できます。

 しかし的確な評価は難しく、管理職によるバラツキが発生してしまうことがあります。その理由は人事考課とは測定ではなく、判定であることに由来しています。スポーツの例では、測定とはスピードスケートのように時間で勝ち負けが決まる競技に該当します。時間は誰が測定しても同じ結果になります。同じスケート競技でもフィギュアスケートでは審査員による採点で優劣が決まります。考課項目別の評価はフィギュアスケートにおける採点、つまり管理職による判定と捉えることができます。

 評価結果のバラツキを是正することが重要であるため、人事考課研修の対象は管理職が中心になります。研修の内容は、陥りがちなハロー効果(1つの項目の評価が良いために他の項目も良くしてしまう傾向)、中央化傾向(評価結果が平均値に近い中央に偏る傾向)、寛大化傾向(評価全体が良くなりすぎる傾向)を避けることに主眼が置かれます。

 

鍵を握るフィードバック面談

 人事考課を人材育成に活用するには、管理職によるフィードバック面談が鍵を握ります。フィードバック面談では評価結果と伝えるだけでなく、今後の課題を共有して、その対応を話し合うことで人材育成に結びつけることができます。多くの企業や自治体で目標管理を導入している理由は課題の共有、課題対応の話し合いを円滑に行うことにあります。目標を達成できなかった場合は管理職と対象者で未達原因を課題として共有できます。そして次の期間の目標の設定と達成方法を話し合うことが対象者の成長を促すことになります。

 対象者の能力と意欲を引き上げることによって人材育成が実現できます。能力と意欲を引き上げるには、管理職による指示と動機が必要です。指示とは、担当業務の決定、目標の設定、手順や進め方の提示、納期の設定、報告の要請など、望ましい業務のあり方を示すことです。動機づけとは、期待の伝達、傾聴、質問、承認、賞賛などの働きかけのことです。管理職にはフィードバック面談で指示と動機づけを適切に組み合わせて、対象者の能力と意欲を高めて人材育成に貢献することが期待されます。

フィードバック面談での課題共有、課題対応の話し合いで対象者の強みを把握できます。この強みの把握が適材適所の基礎になります。自部署よりも他の部署で強みを発揮できる対象者がいる場合には、人事異動によって適材適所を実現できます。

 

日常業務に結びつけることの重要性

 公正な処遇、人材育成、適材適所の3つの目的を実現するには、人事考課を一過性の恒例行事として捉えるのではなく、管理職の日常業務に結びつけることが必要です。具体的には日常業務において対象者1人1人の業務における能力と意欲を把握することが必要です。能力と意欲は感覚的に把握すべきではなく、業務の実態、具体的な場面を裏付けとして把握すべきです。例えば「後輩に対して報告書作成方法を月末に15分程度の時間をかけて教えている」といった場面を確認できれば、後輩指導に関する能力と意欲を備えている証になります。このように管理職が対象者の業務の実態を観察して必要事項を記録すること、さらには定期的に例えば月1回、対象者と個別面談を行うことで、人事考課の3つの目的を日常業務に組み入れていることができます。

 近年、企業や自治体でプレイングマネジャーの管理職が増えています。管理職には自部署のマネジメントに加えて、本人が直接担当する業務で成果を獲得することが求められます。自部署のマネジメントとプレイヤーとしての成果獲得を両立させるには、計画的な業務遂行が必要不可欠です。プレイングマネジャーには、計画に基づきプレイヤーとして担当業務に費やす時間と自部署のマネジメントのための時間を適切に配分することが期待されます。管理職が月次および週間単位で業務計画を立案してマネジメントに必要な時間を確保できてこそ、人事考課を日常業務に組み入れることになり、人事考課の有効活用に結びつきます。

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