過去のコラム記事はこちら:2019年1月「初夢を正夢に変える事業計画」、2019年3月「新入社員の戦力化における組織文化の重要性」

2019年8月「人事考課の有効活用」

                                         
 

コラム

「ストレスチェック制度の有効活用」

2019年11月1日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆ストレスチェック制度の意義

  今年の12月1日でストレスチェック制度導入から5年目を迎えます。ストレスチェック制度は2015年12月1日施行の改正労働安全衛生法が根拠となっています。一定の規模(従業員数50人)以上の事業所は制度が義務化されていて、規模が小さい事業所は、当面は努力義務にとどめられています。ストレスチェック制度導入の背景にはハラスメントや過労によるうつ病などの精神障害の増加があります。
  厚生労働省の統計では精神障害による2018年度労災認定に請求は1,820件、支給決定が465件です。支給決定は前年比で41件減少していますが、請求は前年比88件の増加であり、6年連続で増加しています。業種別の内訳は医療・福祉が請求では1位、支給で2位、製造業は請求では2位、支給が1位です。卸売業・小売業が請求と支給の両方で3位になっており特定業種集中の傾向が確認できます。
  ストレスチェックは年1回実施されていることから、多くの企業が4回目のストレスチェックを行うことが想定されます。医療・福祉や製造業などではストレスチェック制度の効果と課題を振り返るべき時期を迎えています。

 

◆三位一体での取り組み

  ストレスチェック制度はアンケートで「ストレスの原因」、「心身のストレス反応」、「ストレス反応に影響を与える項目」を調べます。調査結果は点数化され「セルフケアに関するアドバイス」も含めてフィードバックされます。そして本人の希望に基づき面接指導やカウンセリングを受けることができます。同じ職場で3年以上働き続けている人は前年及び前々年の点数と比較することができます。
  新しい制度の導入直後は問題意識が高く、3年目頃までは実績を踏まえて変更や改善が加えられる傾向があります。しかし次第に熱意が下がり、形骸化することが懸念されます。問題意識を持ち続けることで制度を有効活用することが期待されます。
  ストレスチェック制度を有効活用するには回答者、管理職、人事部門の三位一体での取り組みが必要です。回答者にはセルフケアと呼ばれる自己管理が期待されます。主体的に面接指導やカウンセリングを受けるなどがセルフケアに該当します。
管理職はラインケアと呼ばれる役割を果たすことが必要です。ラインケアの役割には3つの要素があります。1つ目は職場のメンバーを観察すること、2つ目は気になるメンバーがいる場合には対話を通じて本人の状況を確認することです。3つ目は状況確認の結果を踏まえて、人事部門や産業医などとの橋渡しを行うことです。
  人事部門に期待されるのは、他の人事施策と関連づけながらラインケアとセルフケアが十分に機能するような環境を整えることです。このように本人、管理職、人事部門が三位一体で取り組むことがストレスチェック制度の有効活用に結びつきます。

 

◆職場満足度向上に向けた活用

  人事部門と管理職にはストレスチェック制度を働き方改革に結びつけることが期待されています。働き方改革は、とかく勤務時間管理の面が注目されがちです。できれば視野を広げて望ましい職場環境を整えることを目指して進めるべきです。望ましい職場環境を整える上で目標とすべき状態には「健康職場モデル」があります。「健康職場モデル」とは、米国立労働安全衛生研究所が提唱している考え方であり、「職場満足度」と「仕事の生産性」が両立している理想的な状態のことです。この理想的な状態のことを「ワーク・エンゲイジメント」と呼ぶこともあります。
  ストレスチェック制度で「健康職場モデル」の条件である「職場満足度」を確認できます。ストレスが過重なメンバーが少なければ「職場満足度」は高いと判断できます。「職場満足度」が低い場合には高めるための対策が期待されます。具体的には業務計画立案と情報共有、勤務時間管理と分担調整、業務の指示と手順の適正化、職場での協力関係づくり、安心感のある制度整備の5つの対策を組み合わせることが重要です。
  人事部門による制度整備だけではなく、各職場の管理職が業務計画立案と情報共有から職場での協力関係づくりに取り組みことによって、「職場満足度」を高めることができます。人事部門と管理職が協力することによって、ストレスチェック制度を活用して「職場満足度」を向上させることが期待されます。

 

以上

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■コラム「ストレスチェック制度の有効活用」