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コラム

「組織体制変更による成長のきっかけづくり」

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2022年4月4日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆組織と戦略の関係

 「組織は戦略に従う」という古典的な名言があります。この名言は1960年代にアメリカのチャンドラーが主張しました。戦略を立案した内容に従って組織体制を変更することを意味しています。各社の戦略立案に伴い、組織体制が変更されることが想定されます。2021年度に東京証券取引所に上場している企業での事業再編などの戦略が発表された事例は368件と過去最高であり、前年度比で約2割の増加です。実例にはブリヂストンの工場削減、三菱電機の液晶テレビ撤退などがあります。さらに2022年度も様々な戦略を打ち出している企業が確認されています。富士通は2023年3月までに固定費を300億円削減することを目指して、過去最大の3千人以上の早期退職を決めました。組織体制をスリム化してITサービス事業を請負型から提案型に転換することを目指しています。 
 「組織は戦略に従う」という名言に加えて「戦略は組織に従う」とも言われています。「戦略は組織に従う」はアメリカのアンゾフが1970年代に言い始めました。立案した戦略に従って組織体制を変更した後、変更した組織体制によって戦略が実行されることを意味しています。そして戦略を実行する過程では組織体制に加えて制度を変更すること、配置されている人材が成長することが必要になります。

◆成長のきっかけづくり

 組織体制変更を人材の成長のきっかけにするには、組織体制変更の目的を具体化することが期待されます。ITサービス事業の提案型への転換を目的としている富士通では、ジョブ型雇用を全社の9割の人材に拡大することを目指しています。また専門的なデジタル技術などの必要なスキルを習得するための研修講座を3年前の4倍に増やしています。このように組織体制変更の目的を踏まえて、既存人材にとっての成長のきっかけをつくることが戦略の実行に結びつきます。
 戦略の実行に結びつくような成長を実現するには、日常業務を通じてのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)だけでは不十分です。必要な能力要件を抽出した上で、育成プログラムを準備することが期待されます。富士通が研修講座を大幅に増やしているように、成長のきっかけになりうる育成プログラムを準備することが必要です。
 しかし組織体制変更が事業環境の変化に対応することを目的にしている場合は、適切な育成プログラムを準備することが難しく、時間がかかってしまうことが考えられます。適切な育成プログラムの準備が難しい場合は、主要メンバーを集めてワークショップを開催することが選択肢の1つになります。ワークショップの効果を高めるには集めるメンバーの人選とファシリテーションが重要です。効果的な方法を模索しつつ組織体制変更の目的を踏まえて、成長のきっかけをつくることが期待されます。

◆組織体制変更の成功条件

 戦略の実行を売上高や利益といった経営成果に結びつけることが組織体制変更の成功にとっての証になります。富士通の場合は売上高営業利益率10%を目標にしています。設定した目標を達成するためには成長のきっかけをつくる段階で経営成果に結びつけるための準備を開始すべきです。経営成果に結びつけるには顧客との関係が重要です。ITサービス事業を請負型から提案型に展開するには、顧客の課題を解決すること、そのために求められる業務内容を明確することが必要です。成長のきっかけをつくる段階で、望ましい業務内容を明確にすることによって、ジョブ型雇用の導入や拡大に結びつけやすくなります。
 望ましい業務内容を明確にすることは、人事部門の単独での取り組みで実現することは困難です。経営者、現業の管理職が積極的に関与することで、望ましい業務内容を明確にすること、成長のきっかけをつくることが実現できます。特にジョブ型雇用の導入や拡大では現業の管理職の積極的な関与は必要不可欠です。組織体制変更を成功に導くために、望ましい業務内容を遂行する過程で外部のノウハウを活用することも考えられます。組織体制変更を成功に導くために、経営者及び現業の管理職の関与、外部の活用を組み合わせることが期待されます。

以上

■コラム「組織体制変更による成長のきっかけづくり」