過去のコラム記事はこちら:2019年1月「初夢を正夢に変える事業計画」、2019年3月「新入社員の戦力化における組織文化の重要性」、2019年8月「人事考課の有効活用」、2019年11月「ストレスチェック制度の有効活用」、2020年1月「研修計画を通じた人材育成効果の高め方」、2020年4月「新任管理職に対する期待」、2020年5月「新型コロナウイルスの影響下で求められる新入社員の早期フォロー」、2020年7月「ジョブ型雇用本格導入の条件」、2020年9月「オンライン方式人材育成の普及と課題」、2020年11月「目標管理の新しいノウハウとしてのOKR」、2021年1月「デジタルトランスフォーメーション(DX)の期待と課題」、2021年3月「テレワークにおけるマネジメントの心得」、2021年6月「デジタル化におけるアート思考」

 

 

 

コラム

「採用権と役割分担」

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2021年9月2日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆テレワークに伴うジョブ型雇用の導入

 感染症蔓延に伴ってジョブ型雇用制度を導入する企業が増えています。ジョブ型雇用制度とは職務内容を明確に定義する制度です。職務内容を定義するには職種と階層の2つの枠組みを踏まえて、請求書作成や伝票処理といった業務内容まで具体化することが必要です。テレワークの必要性が高まっている環境においては、職場のメンバー同士のコミュニケーションを前提に業務を進めるメンバーシップ型雇用制度より、ジョブ型雇用制度の方が適していると考えられています。
 ジョブ型雇用制度を導入した企業には富士通や三菱ケミカルなどがあります。富士通は2022年の年末までに国内のオフィスのスペースを半分にすることを発表しており、テレワークを全社的に導入する準備を進めています。最初に課長職を対象にジョブ型雇用制度を導入しました。三菱ケミカルは昨年10月に全管理職約5千人を対象にジョブ型雇用制度を導入しました。このような取り組みを踏まえて、経団連(日本経済団体連合会)は今年1月の時点でジョブ型雇用制度の積極的な導入を呼びかけています。

◆採用権の現場移行

 テレワークでは1人1人のメンバーが異なる場所で業務を進めるため、オンラインでのコミュニケーションの機会が発生します。オンラインでのコミュニケーションは対面でのコミュニケーションと比べると、相手の表情を読み取りにくいために真意を確認しにくい傾向があります。しかし言葉を厳選して質問することで対面と同等のコミュニケーション効果を確保できます。オンラインでのコミュニケーションにおいて工夫することなど、業務環境の変化に的確に対応する必要性が高まっています。
 ジョブ型雇用制度が定着している欧米企業では、管理職には組織の目標を達成するためにベストチームをつくることが要求されています。この要求に応えるために、人材の採用権は人事部門ではなく、現場の管理職が握っています。日本企業でジョブ型雇用制度が拡大していくと、欧米のように採用権が現場の管理職に移行していくことが想定されます。既に富士通では人材の採用権を現場の管理部門に移行し始めています。人材の採用権を現場に移行することによって、現場の管理職は、優れた専門的能力を持つ即戦力の人材や適性と意欲が高く成長が期待できる人材を採用することから、育成を含めた能力発揮までの全ての責任を担うことになります。

◆人事部門に期待される役割

 採用権が現場の管理職に移行することに伴って、人事部門と現場の管理職の役割分担を見直すことが必要になります。重要なことは人事部門にしかできない役割を特定することです。採用権を活用して現場の管理職がベストチームをつくり上げても、その望ましい状態が永久に続く訳ではありません。ある時点で組織が活性化しても、いずれは活性化した状態に陰りが出ます。その時に、あるいは陰りが出る前に、組織の活性化の度合いを高めることや、持続できるような人事施策を講じることが期待されます。具体的な施策には組織のメンバーの入れ替えや組織横断的な研修の実施があります。組織のメンバーの入れ替えは特に重要であり、若いメンバーの入れ替えだけでなく、管理職の交代も考えられます。管理職の交代には、現在の課長を部長に昇格させること、昇格に伴う後任の課長を任命することも含まれます。
 人事部門が組織の活性化に貢献するためには人材の目利きが求められます。人材の目利きとは、現在までの業務実績だけではなく、資質を含めた将来性を判断することです。採用権の移行に伴って、人事部門が現場の管理職との新たな役割分担を模索することによって、業務環境の変化に的確に対応することが期待されます

以上

■コラム「採用権と役割分担」