過去のコラム記事はこちら:2019年1月「初夢を正夢に変える事業計画」、2019年3月新入社員の戦力化における組織文化の重要性」、2019年8月「人事考課の有効活用」、2019年11月「ストレスチェック制度の有効活用」、2020年1月「研修計画を通じた人材育成効果の高め方」

コラム

「新任管理職に対する期待」

2020年4月1日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

1.新任管理職に期待される組織の中核的な存在

4月は新しい年度の始まりであり、毎年、民間企業や自治体で多くの新任管理職が誕生します。組織から期待される役割を果たすことができると認められている人材が新しい管理職として任命されます。
管理職には組織の中核的な存在として3つの役割が期待されます。1つ目の役割は管理対象の組織の「業務計画の立案と実行」です。課長によっての「業務計画の立案と実行」は部長と約束すること、そしてその約束を守ることに該当します。約束することとは年度または半期の業務計画を立案することです。計画に基づき予算と配置されているメンバーを活用して業務を進めることが約束を守ることです。
2つ目の役割は「人材育成」です。課長の場合であれば、課のメンバー1人1人に適切な業務を割り当て、業務遂行を通じて能力と意欲を高めることであり、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)とも呼ばれます。OJTは部下に対する役割になります。
3つ目の役割は「組織連携」です。課長の場合は、部長による複数の課同士の調整を受け身で待つのではなく、業務遂行において必要になる他の課との連携を主体的に行うことが期待されます。組織連携を通じた他の課との協力関係づくりは、横の関係における役割と捉えることができます。このように課長などの新任管理職は上と下と横との関係の中で組織の中核的な存在としての役割を果たすことが期待されています。

 

2.期待される組織の活性化に対する貢献

新任管理職が組織の中核的な存在としての役割を果たすことで組織の活性化に貢献できます。新任課長などにおいて、一般的に「2・6・2の法則」が働き、期待を上回る人数が2割、期待通りの人数が6割、期待を下回る人数が2割という分布を示すことが想定されます。
新任課長が期待される役割を果たすことができなければ、部長が課長の役割を「代行」することが懸念されます。その結果、部長本来の役割に十分に時間を割けない事態が発生してしまうかもしれません。
反対に新任課長が期待以上の役割を果たすことができる場合では、課長の役割のみならず、部長の役割の一部の「巻き取り」を行います。具体例としては部長から権限を委譲された課長が複数の部の協力が必要な業務改革プロジェクトにおける情報共有の役割を担うことなどがあります。この場合は、部長は課長による「巻き取り」によって時間的な余力を確保できます。部長は、この余力を有効に使って、例えば取締役から権限を委譲されて、中期経営計画の立案などに取り組むことが可能です。
「巻き取り」と「代行」は新任管理職の力量を判断するためのキーワードです。「代行」を回避して、「巻き取り」を目指することによって組織の活性化に貢献にすることができます。

 

3.期待される2ランク上の視野

管理職に昇格するまでは、自分の業務と1ランク上の業務を意識することで十分です。例えば主任の場合は、主任としての役割を果たすために、1ランク上の課長の業務を視野に入れて業務を遂行できれば及第点です。
しかし新任課長の場合、1ランク上の部長の業務に加えて、2ランク上の取締役の業務を視野に入れながら役割を果たすことが期待されます。新任部長の場合であれば取締役の上の社長の業務を視野に入れることが期待されます。
新しい管理職の任命は組織の新陳代謝を促して、組織の活性化に結びつきます。そのための代表的な方策が、1ランク上の業務の「巻き取り」です。新任課長が部長の業務の「巻き取り」を行うことの背景には、部長による取締役の業務の「巻き取り」が存在することが考えられます。例えば部長が取締役の業務である中期経営計画の立案を委譲され、「巻き取り」を行うことが新任課長による部長の業務の「巻き取り」に結びつきます。
新任課長が、部長からの業務委譲、例えば複数の部の協力が必要な業務改革プロジェクトにおける情報共有の「巻き取り」を円滑に進めるためには、任命直後から2ランク上の業務を視野に入れておくことが必要です。2ランク上の業務を視野に入れることで、部長からの委譲を受けやすくなります。2ランク上の業務を視野に入れることによって、新任課長は「巻き取り」の準備として、任命直後から担当業務の一部を課のメンバーに委譲できるように、課のメンバーの育成に注力できるようになります。

以上

■コラム「新任管理職に対する期待」