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2023年6月「ジョブ型雇用の本質と効果」、2023年4月「インフレにおけるブランドの重要性」、2023年1月「バランススコアカード30年の貢献と課題」、「2022年9月「データサイエンティストに対する期待と課題」、「2022年7月「人的資本の開示による企業価値向上」、2022年4月「組織体制変更による成長のきっかけづくり」、2022年1月「IT人材の転職とデジタル化の成否」、2021年9月「採用権と役割分担」、2021年6月「デジタル化におけるアート思考」、2021年3月「テレワークにおけるマネジメントの心得」、2021年1月「デジタルトランスフォーメーション(DX)の期待と課題」、2020年11月「目標管理の新しいノウハウとしてのOKR」、2020年9月「オンライン方式人材育成の普及と課題」、2020年7月「ジョブ型雇用本格導入の条件」、2020年5月「新型コロナウイルスの影響下で求められる新入社員の早期フォロー」、2020年4月「新任管理職に対する期待」、2020年1月「研修計画を通じた人材育成効果の高め方」、2019年11月「ストレスチェック制度の有効活用」、2019年8月「人事考課の有効活用」、2019年3月「新入社員の戦力化における組織文化の重要性」、2019年1月「初夢を正夢に変える事業計画

 

コラム

「デジタル化に必要な人材」

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2023年8月1日

主任講師・コンサルタント

山田 豊文

◆データサイエンティストの評価

 政府は学生や社会人がデジタル技能を習得できる機会を整備することを7月25日に公表しました。2024年までに専門人材を11万人ほど上積みする計画です。計画立案に当たってはデータサイエンティストなどの育成が急務と認識しています。
 データサイエンティストの育成については、一般社団法人日本データサイエンティスト協会が2021年9月から検定試験を開始しています。データサイエンティスト検定では課題解決のためのビジネス力、データ分析のためのデータサイエンス力、データ活用のためのデータエンジニアリング力が問われます。そして3つの力を組み合わせて、デジタル化に貢献することが期待されています。
 一方、アメリカではデータサイエンティストの評価が下がっています。昨年12月に公表されたアメリカの人気職業ランキングではデータサイエンティストは3位でした。データサイエンティストは2019年まで4年連続で1位でしたが、2020年から3年連続で別の職業に1位を譲っています。昨年の1位はエンタープライズアーキテクトです。エンタープライズアーキテクトは事業と組織全体のシステムを結びつけることが役割であり、データサイエンティストよりも守備範囲が広い職業として捉えられています。

◆デジタル化の位置づけ

 アメリカでの人気職業ランキングにおける評価低下に加えて、データサイエンティスト検定の受講者数も伸び悩んでいます。2021年9月の第1回が約1400人、2回目の2022年6月は約2900人と増えましたが、3回目の2022年11月は約2600人と減少しました。
 デジタル化の取り組みは3つの段階で捉えることができます。最初の段階はデータのデジタル化でありペーパーレス化を推進することです。2つ目の段階は業務のデジタル化です。実例には同じ場所に集まって対面で実施していた研修を、オンラインでの実施に切り替えることがあります。最後の段階がデジタルトランスフォーメーションであり、データと業務のデジタル化を踏まえた事業単位の変革になります。データと業務のデジタル化は業務遂行時間や費用を削減します。捻出された時間や費用を活用して、新規事業の開始や新規顧客開拓に取り組むことでデジタルトランスフォーメーションが実現されます。
 各企業は、この3つの段階で自社のデジタル化の取り組みを位置づけることによって、データサイエンティストやエンタープライズアーキテクトなどのデジタル化に必要な人材を明確にすることができます。

◆将来像に基づく人材の確保

 ドイツのシーメンスは7月中旬の事業説明会においてブッシュ社長が「ドイツにはデジタルの未来がある」と発言しました。この発言は望ましい将来像を実現するために、先進企業として貢献していく意欲を示しています。日本国内でも先進企業による将来像を示した上でのデジタル化の推進、そして必要な人材の確保や育成が期待されます。
 日立製作所(以下、日立と略記)は中期経営計画において成長ストーリーの軸の1つにデジタル化を掲げています。日立は顧客企業のデータを使ってデジタル化を加速するためのソリューションをルマーダと呼び、積極的に推進しています。2020年にルマーダデータサイエンスラボという組織を立ち上げています。また日立はジョブ型雇用の本格的導入により、確保したい人材を職務記述書で明確にしています。
必要な人材を確保するためにリスキリング(新たな分野や業務に必要なスキルを学ぶこと)に取り組み、既存の人材がデジタル化のスキルを習得することを目指している企業に旭化成があります。具体的には素材開発におけるAIの活用や工場におけるIoTの活用などを習得することに取り組んでいます。グループの4万人をデジタル化に貢献できる人材として育成することを2021年に表明しています。
 デジタル化に必要な人材を確保するには日立や旭化成のように、目指すべき将来像を明確にした上で組織的に取り組むことが期待されます。

以上

■コラム「デジタル化に必要な人材」